2005.3.21~25 《Germany》

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エルベ河にかかる橋から旧市街を臨む
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ウランバートルにもこんな壁画あったなあ
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写真には写っていないけど、周りには遠巻きにする大勢の見物人が…
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アコーディオン弾きとツーショット
やっぱり酔っ払ってるみたいだなあ
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** 2005/03/21 – Berlin **

旧東ベルリンの中心、アレクサンダー広場からそう遠くない場所のホステルに宿をとる。ホステルの前の通りからは、真っ白な尖塔でミラーボールを串刺しにしたような不思議なタワー、テレビ塔が見えている。今回の宿には、日本人も何人か泊まっているようだ。
ヨーロッパを度する日本人には、美術や建築を勉強している人が多い。そんな人達と話をするのは面白い。
今回同室になった人からこんな話を聞いた。
彼がベルリンの地下鉄に乗っているときのこと。人種差別主義者が彼に近付いてきて、外国人は出ていけ、というようなことを言ってからんできたとき、同じ客車に乗っていた人が、お前こそここから出ていけ、と彼を助けてくれ、あんな奴がいてすまないと謝ったという。
彼はほかの街でも似たような目にあったけど、(多分彼のいかにも華奢な東洋人といった風貌からだろう。残念ながら弱者を狙う卑劣な奴は世界中どこにでもいるようだ。)ベルリンの人達は特に親切だからこの街は好きだという。僕も彼のベルリン好きに賛成。
僕の中にもベルリンに対するある一つの思い入れがあるのだ。

2年前の2月、僕はエクアドルにいた。アンデス山脈の北部、美しい火山が多く見られる地方の、ペグチェという小さなインディヘナの村で、週2-3回の演奏を、宿、二食付きで引き受けて、のんびり練習してすごしていた。
そのうち地元の人や旅行者から、どうやらアメリカは本気でイラクを攻撃するつもりらしい、という話を聞くようになり、遠く日本を離れた赤道直下の村で、俺はいったい何をしているんだ? 世界はいったいどうなってしまうんだ? と、とても不安で暗い気分になって行った。そんな時、ある旅行者から、ロンドンで、ベルリンで、ニューヨークで、サンフランシスコで、世界中の大都市で数万~10万人規模のイラク攻撃に反対する人達のデモが同時に行われた、というニュースを聞いて、喜びとは違う、もっとせつない感情に熱い涙を流した。

ロンドンのサウスケンジントンで見た、空からの地球という写真展に、ベルリンの写真が一枚あった。ブランデンブルグ門から戦勝記念の塔へと続く通を埋め尽くす、何万人ものベルリン市民。それが何の写真だったかは憶えていないけど、その写真とエクアドルで聞いた話が、僕の中でひとつの強烈なイメージとなった。
アメリカのイラク攻撃に抗議する10万人のベルリン市民がブランデンブルグ門から戦勝記念の塔へ向けて行進してゆく。

6月17日通りという名前のついた、ベルリン市中央の広大な林を貫くその通りは、想像したよりも遥かに大きい。
ブランデンブルグ門の前、かつて東西ベルリンを分断していた壁のあった場所に立つと、戦勝記念の塔は遥か前方にかすんで見える。ベルリン市民が埋め尽くしたその道を、今日は僕ひとりで歩いている。世界中の戦争・暴力に抗議して、顔をあげ前を向いて。歩きながら周りに何万人ものベルリン市民の存在を感じるような気がした。

 

** 2005/03/25 – Dresden [イースター] **

建設中なのか破壊の最中なのか、とにかく荒れ果てた瓦礫の山の間のプラットホームに列車は止まった。ベルリンと同じ国とは思えない、取り残された雰囲気の街だ。トラムに乗り、エルベ河に近付くと、景色は一転し、美しい街並みが目を引く。ホステルの側の公園では、市民が芝生の上で遊んだり、寝そべったりしている。明日からイースター、みんなリラックスしている様子だ。
バーの並ぶ地区にあるホステルの周りでは、明け方まで酔っ払いの声が絶えなかった。

イースター初日の昼近く。エルベ河にかかる橋の上から見ると、旧市外はすごい賑わいだ。しばらく街を歩き回る。壁画の絵が描かれた城壁や教会、歴史の重みを感じさせる建物が並び圧倒させられる。街角にはアコーディオン弾き、バイオリン弾き、彫刻になりすました立ち芸人、色々なものを売る人たち。見ていて飽きない。宮殿の中庭のような場所から、クラシックギターの音色が聞こえてきた。ベンチに腰掛けて、しばらく聞いた。観光のメインルートから外れた静かなその場所に彼の引くギターの音色はいかにもふさわしいように感じた。
1時間くらいして代わって貰い、そこで馬頭琴を弾き始める。
思ったとおり、自然な音響。気持ちよく弾けそうだ。
しばらくして、僕の演奏をきいていた彼がCDをもって近付いてきて、よかったら交換しないかと言う。
僕もそう思っていたので、喜んで彼にCDを渡した。

2時間ほど歌って、カフェでビールを飲み、夕方の街をしばらく歩いた。おかしな仮装でアコーディオンを引く楽しい男(たぶん男)がいて、あまりのおかしさに、(ビールに酔って上機嫌だったのか?)一緒に写真を撮って貰う。
もう一度、どこかで少し弾きたかったけれど、いい場所はすべて先客がいたので諦めて、昼間の熱気の残る街を、観光客を、日が暮れるまで眺めていた。