2005.4.2~6 《Hungary》

hun

 

ドナウ河沿いにて
向こう岸にはブダ城が見えている
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スプリングフェスティバル 郷土料理の屋台が並ぶ
いい匂い しかしなんとも塩辛い
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** 2005/04/03 – Budapest [バスカー(ストリートミュージャン)] **

昨日に続いて、今日も、午前中、街が騒がしくなる前に馬頭琴を弾き出す。
警察が来ないか、少し周りを気にしての演奏だ。
この街のストリートで弾くにはライセンスがいる。昨日気持ちよく弾いていると、二人組の警察に止められてそれを知った。よくあることだし、そんなに高圧的な態度ではなかったので、気分を害することもなく、場所を変えてドナウ河のすぐ横、音響はいまひとつだけど、景色はとてもいい場所に移動して弾いた。
ちょうど一時間、最後にドゥンジンガラブ・マグタールと生活の柄を歌って、聴いている人に終了を告げる。
ヴァイオリンケースを持った青年が話し掛けて来た。
彼はウクライナ人で、ブダペストの友達の家に遊びに来ていて、これからバスキング(ストリートで演奏してお金を稼ぐこと)をしながらヨーロッパを旅したいという。このあと自分も弾くから、よかったら聴いて行ってくれというので、片付けて彼の演奏を聴くことにした。

クラッシックのスタンダード、ハンガリー民謡を何曲か弾いたあと、ヴィヴァルディの四季、「春」だったか「夏」だったか忘れたけど、テンポの速いのを弾き始めた。
2人のバイオリンの掛け合いの場所になると、彼は1人で弾いているんだけれど、多分相棒がいたのかな、そこにはいないその人との駆け引きを楽しむように演奏にどんどん入り込んでいく。曲が素晴らしいのは勿論なんだけど、彼の腕も素晴らしい。すごく惹きつけられる演奏だった。
一息ついた時に、いい演奏を聴かせてくれてありがとう、と伝えると彼は、自分は音大を卒業して、父親の作ってくれたバイオリンを使っている、いつか日本へ、特に、京都へ行ってみたい、そこでバスキングしたいという話をしてくれた。

日本の都会の喧騒の中、彼のバイオリンがどう響くのかな、と想像してみる。ギターの弾き語りばかりが目立つ日本の街角で、彼の演奏をいつか聴いてみたい、と思った。

 

** 2005/04/04 – Budapest [ルーマニアを目指して part 1] **

今回の旅の最大の目的地、ルーマニア北部マラムレシュ地方をいよいよ目指す。
初めの予定ではイースターをマラムレシュで過ごす、はずだったのだけれど、いつもどおりというか大幅に予定を過ぎての到着となりそう。まあこれも予定通りということか。
ブダペスト北駅で、僕の唯一のアイテム「ヨーロッパロードマップ・2001-2年」を見せながら地名を連呼して得た頼りない情報によると、ルーマニア北部へ行く直通列車はなく、ユーゴスラビア国境近くまで迂回して、しかも4度も乗り換えなければならないらしいので、列車でのルーマニア行きをあきらめて、とりあえずハンガリー国内を旅しながらマラムレシュに程近い東部の国境を目指すことにした。国境までいければ、その先はきっとバスか何かあるだろう。
宿のオヤジ、ピエールに、東のほうにどこか訪れるのに良い場所はないか?と尋ねるとすぐに Eger!と答えが返ってきた。地図を広げる。ブダペストの東約150キロにアギャールを発見。明日の目的地が決まった。

** 2005/04/05 – Eger [ルーマニアを目指して part 2] **

旅の資金にTCを両替しに銀行へ行く途中いつもの道を通ると、ちょうど警察が歩いているのと出会った。
これはついてるぞと、しばらく彼らをやり過ごしてブダペスト最後の演奏を楽しむ。
稼いだ金でピザをつまみにビールを飲み、お昼過ぎのバスにのって2時間、まったいらな大地にまっすぐ伸びるハイウェイを降りて北へ曲がるとまもなく目的地アギャールに着いた。

大都会で過ごした後の地方都市で、いつも感じる安堵。通りにいる人、一人一人の顔が識別できる、そんな気分がする。アギャール城の城壁のそばの雰囲気のいい中庭に面した民宿に宿を決めて早速夕方のまちへ馬頭琴と椅子を持って繰り出す。旧市街のメインストリート、夕日のあたる場所に椅子をおき馬頭琴を鳴らすと、一瞬音が大き過ぎやしないかと心配になるくらいよく響いた。そんな中でいつもよりやさしくゆったりと弾く。気が付くと向かいの建物の窓がみんな開いている。気に入ってくれているようだ。1時間弾いて片付けていると何人か集まってきた。これはチャンスだと、もってきた地図を広げて、明日以降寄ることになりそうな町をいくつか教えてもらった。

** 2005/04/06 – Satu-Mare [ルーマニアを目指して part 3] **

朝、少し早起きして町を散歩。パン屋を見つけることができた。アギャール城を見上げる広場のベンチでサンドウィッチをかじり、しばらく朝の太陽を吸収。

昨夜、ハンガリービールを求めて入ったバーでイギリス人カップルと出会った。2人は車で中東まで旅をする途中で、これからルーマニアを目指すというではないか。なんという幸運! ルーマニアまで乗せていってもらうことになった。
宿に戻り荷物をまとめて2人の泊まっている橋のそばのホテルへ。橋の上で練習して待っているとビデオをまわしながら彼がやってきた。彼、トビーは日本製品が大好きだ。ソニーのビデオ、デジカメ、MDプレイーのほかに、MUJIのポケットナイフも持っていた。記念撮影した後、赤いおんぼろブルーバードに乗り込み、出発。最初に目指すのは Tokaj という甘いワインで有名な町。

ハンガリー北部山間部の細く曲がりくねった道をドライブ。景色はきれいというほどではない。道路脇にまだ雪の残る峠を越えて川に沿ってあるいくつかの村を過ぎると再び大草原にでる。途中の町でパンと野菜を買って、トカイの少し手前の小さな村へ。丘の上にある教会の庭でランチを食べることにした。
ブルーバードのトランクには大きなランチボックスが、中には旅の初めの頃フランスで買ったというチーズ、サラミが入っていて、開けるとすごいにおい、かなり発酵が進んでいるようだが食えるのか? 少しパンにつけて食べてみる。意外とおいしい。癖になりそうな味だ。
頭上で教会の鐘が鳴り出す。目の前にはただただ畑、原野が広がり、鐘の音は地平線の果てへ消えていく。寂しい風景だ。屋根の上に黒い旗が掲げてあるのは、ローマ法王が亡くなったからかな、とトビーが言った。

トカイには期待していた試飲のできるワイナリーは無く、ワインも想像以上に高価だったので、甘い酒はあまり好きではない僕とトビーはそうそうに興味を失い、彼女がワインを選ぶのを待って次の目的地、昨日アギャールの人に奨められた大きな教会のある東部の小さな村へ向けて出発。東ハンガリー平原(と勝手に名付ける)を走りながら、このままモンゴルまでずっと草原が続いていて、昔、モンゴル人はここまで馬で攻めて来たんだなあ、なんて想像してみた。
教えてもらった小さな村たちは、ほんとに小さな村で、宿はおろか、レストランも見当たらなかったので、そのままルーマニアまで走りつづけることにした。前を走るロシア製の古い大きなトラック、荷台にテーブル、椅子が置いてあり、田舎の親父が腰掛けてビールを飲んでいる。しばらく後ろから冷やかしながらついていくと親父も手を振って答えてくれた。草原に落ちる夕日がとてもきれいだった。

暗くなってから国境に着く。両替所もない、トラックが数台停まっているだけの寂れた国境。ここを越えるといよいよルーマニアだ。